私は車椅子ユーザーなのでバリアフリー住宅には目が行きます。

意外かもしれませんが、名建築と呼ばれる住宅には車椅子でも快適な住宅が有ります。

今回御紹介するのは、私の一番好きな米国の建築家フランク・ロイド・ライト作「ローラン邸」です。

 

1952年にイリノイ州ロックフォードに建てられたこの住宅は、車椅子のケニスとその妻フィリスのローラン夫妻がライトに建築依頼した事から動き始めました。

ライトの後期建築の特徴であるユーソニアン建築。それはバリアフリー住宅と非常に相性の良いコンセプトでした。

最低限の間仕切りによる部屋の連続性。外部と内部の一体感。自然素材の徹底。人間工学の導入。有機的建築(デザインの統一)。

この建物には、そこに車椅子の施主がより快適に過ごす為の細かい配慮が随所に見られます。

テーブルやデスクの高さは、車椅子のケニスがそのまま使える高さに統一されています。

室内に段差は無く、各部屋は(極一部のプライベートなスペース以外は)連続しており移動のストレスを極力排除してあります。

また本棚や収納も低い位置に違和感なく配置されており、細部までライトの思想が行き渡っています。

写真からも分かるように、高い位置には窓と飾り棚があります。

そして日常使う物などは、車椅子でもアクセス可能な低い位置に収納が設けられています。

しかしこのデザインの素晴らしい所は「バリアフリー」を感じさせない部分です。

日本でバリアフリーと言えば、至る所に手摺を付けたり、無理矢理にスロープを付けたりしていませんか?

つまりベースのデザインがあって、そこに何かを加えてバリアフリーを実現しているわけです。

これではデザインが崩れるのは至極当然ですし、画一的な如何にもなバリアフリー住宅にしかなりません。

例えば「手摺」の高さは一般に750mm〜800mmが理想と言われます。ダイニングテーブルの高さが大体700mm〜730mm程度。

特に車椅子の場合は座面高が450mm程度ですから、差尺の280mmを加えると理想のテーブル高は730mmとなります。

サイドボードなども700mm〜800mm程度の高さが一般的ですし、椅子の背もたれも800mm前後ですね。

つまり手摺の代わりになる物は、見回せば数多くあるのです。ライトは造り付けの家具でこれらを実現しています。

設計段階でこれらを手摺代わりに使えるよう配置していれば、わざわざ手摺の後付けでデザインを損なう必要は無いのです。

Laurenthouse公式サイトより:https://www.laurenthouse.com/gallery

ローラン邸は見学可能です。場所はイリノイ州ロックフォードなので、訪問するのであればシカゴからアクセスする事になるでしょう。

シカゴから車で1時間30分程度です。公式サイトのこちらのページから予約可能です。

 

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