CM等でも良く使われる有名な邸宅「ファンズワース邸」。いわゆる週末邸と呼ばれる別荘として建てられました。

施主は裕福な女医のファンズワース。「平日は都市で暮らし、週末は郊外の自然の中で暮らす」家をミース・ファン・デル・ローエに依頼した事からこのプロジェクトはスタートしました。

近代建築3巨匠の一人である建築家のミースはバウハウス最後の校長であり、ナチスから逃れてアメリカに活動の場を移していました。

ファンズワースはミースにかなりの部分で裁量を与えていたようで、「より少ない事は、より豊かな事」というミースの思想が色濃く出た作品となっています。

ユニバーサルスペース(均質空間)というモダニズム建築の理念があります。簡単に言うと壁や柱を必要最低限にし、家具やパーテーションで自由に内部を区切る事を可能とする有機的建築理念です。

パッと見た感じは「フィリップ・ジョンソンのグラスハウスの白バージョン?」と思ってしまいますが実はかなり違いがあります。因みにコチラがグラスハウス。

グラスハウスは地面に基礎を造りレンガで床を貼り、そこに鉄骨の柱を立て屋根を載せ、ガラスで囲ったものです。これは恐らく、ファンズワース邸のモデルを見たジョンソンが、独自の解釈で形にしたのでしょう。竣工はグラスハウスが先ですが、それ以前にファンズワース邸の設計モデルをジョンソンが見ていた記録が残っています。

さて話はファンズワース邸に戻って、上の写真が分かり易いですかね・・・実はファンズワース邸、床が不思議なことになっています。

グラスハウスと違い、床よりも外側に建物を支える柱が有ります。どこか頼り無さげで、でも芯の強さを感じさせる印象ですね。

似たデザインでありながら、無骨で男性的なグラスハウスと、軽やかで女性的なファンズワース邸。施主の性別が建物の印象に違いを齎したのかもしれません。

ファンズワース邸が高床構造なのは、この場所(イリノイ州プレイノ)が洪水の多い場所だった為です。まぁそれでも過去に2度、床上浸水したそうですが。

今見てもスタイリッシュで魅力的な建物ですが、施主のファンズワースは気に入らなかったらしく支払いを拒み、結局ミースとの裁判沙汰となりました。建築費が跳ね上がったり、工期の遅れなどもあった様ですが裁判はミース側の勝訴となりました。これに懲りたミースは、これ以降個人邸を引き受けなくなったそうです。

見学できるの?どうやって行くの?

名作住宅にありがちですが、やはり交通の便はイマイチです。

1人ならシカゴからアムトラックやバスで行くのも有りですが、2人以上ならレンタカーで行くのがベストでしょう(料金的にも)。余裕を持って2時間見ておけば大丈夫です。距離は58マイル(93km)。

当日入れるケースも有りますが、公式サイトから予約しておくのが無難です。料金は20ドル。外観の撮影はOKですが、室内の撮影は別料金で許可証が必要。日時により撮影不可の時もあるので注意。

駐車場は少し離れたビジターセンターに有ります。そこから森の中を800m程歩く必要があります。事前連絡しておけばゴルフカートで送って貰う事も可能です。建物に入るには11段(なぜか公式サイトでは8段)の階段があり、車椅子では上がる手段は用意されていません。周りの人に手伝って貰うのが現実的な解決法でしょうね。

日本語音声ガイドはコチラ

実はファンズワース邸、レンタルもできます。結婚式やパーティなどを庭で開く事が出来ます。ケータリングなども含めて様々なプランに対応できる様なので「ココで結婚式をしたい!」と思う建築オタクな御夫婦は、相談してみるのも良いかもしれませんね!

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